【働き方ウィーク③】次の世代が育つ学校へ。大商学園が実践する「DX人材育成」と「組織化」
2026年6月11日から全5回で開催しているオンラインイベント「ロイロノート働き方ウィーク」。
第3回は、ゲストに大商学園高等学校 中村天良先生をお迎えしました。挑戦の輪を広げる工夫や若手・ミドルリーダーの育成、そして推進を支える「組織化」まで、10年以上の実践をご紹介いただきました。
登壇者 中村天良先生(大商学園高等学校 ICT戦略室)
ロイロ認定イノベーター
目次
1. アーカイブ動画
公式YouTubeチャンネルにてアーカイブ動画を公開しています。ぜひご覧ください。
2. 「20分研修」と校内コンテストで、挑戦の輪を広げる
大商学園では、ICT推進を情報科だけに任せず、進路指導部・生徒指導部と並ぶ「ICT戦略室」を組織として運営しています。研修も、以前は全員必須でしたが、ここ数年は気軽に参加できる任意の形へ切り替えました。その一つが、昼休みの「20分研修」と「校内ICT・生成AIコンテスト2026」です。
20分研修
準備
気軽に集まれる部屋(カフェのようなスペース)
すぐ試せるテーマ(生成AI情報、プロンプトの組み立て、業務の引き算など)
具体的な流れ
2週間に1回のペースで、昼休みに20分だけ開催する
1回につき1テーマに絞り、その場で試せる内容を短く共有する
参加は任意。出入り自由で、終わったらすぐ仕事に戻れる
中村先生のコメント
『校内で「絶対この人は忙しい」というキーマンも、20分なら顔を出してくれます。短く区切って開催したことが、参加のハードルを下げたのだと思います』
校内ICT・生成AIコンテスト2026
20分研修を1年続け、年度末には「大商学園ICT・生成AIコンテスト2026」を開催。事前応募を経て選ばれた教職員が、生成AIやICTを使った実践を発表し合う場です。失敗や試行錯誤の過程もオープンに共有し、挑戦する姿勢を称え合うことを大切にしました。
審査は校外に依頼(角が立たず、頑張った人を素直に称えられるため)
応募者は勤続年数で部門分けし、事前審査を経て発表
学校法人が予算面でコミットし、グランプリ・応募者へのインセンティブを用意
中村先生のコメント
『開催後は、応募しなかった先生からも「来年もやるのか」「あれはどうやったのか」という声が出てきました。推進役が研修するより、隣の席の同僚が実践を発表したことのインパクトが大きく、表に出ていなかった工夫が互いに見える機会になりました』
※各発表の内容や最終結果は、特設サイトで公開されています。 https://teradaisho.github.io/ICTcontest2026Repo/
3. AIの使い分け:速いAIで時間を生み、遅いAIで考える
中村先生が本年度から推進しているのが、生成AIの使い方を2つに分けて考える発想です。
生成AIの2つの使い方
速いAI(Fast AI):聞いたらすぐ答えを返す使い方。資料作成、たたき台づくり、集計などの定型業務・下準備を任せる。
遅いAI(Slow AI):すぐに答えを出さず、問いを返して考えさせる使い方。視点や足りない論点をもらいながら、自分で答えをつくる。
この区別はOECDが示したもので、人間の「速い思考・遅い思考」(カーネマンの二重プロセス理論)とも重なります。AIに答えを丸投げすると「できた気」にはなりますが、実力はつきません。先に自分で考えてからAIを使う、この順番が大切だと中村先生は話します。
中村先生のコメント
『マネージャーに筋トレを代わってもらっても、自分の筋肉はつきません。速いAIで時間を生み、その時間を「考える」ために使う。生まれた時間にまた別の速い作業を速いAIに任せてしまうと、内省してスキルアップにつなげる時間がなくなってしまいます』
4. DX人材育成ロードマップ:若手・ミドルリーダーが育つ1年
次の挑戦が、DX人材の育成です。単独の私立高校では体系的な若手研修を組みにくいため、力を入れているといいます。ICTや生成AIの活用だけでなく、社会人として活躍できる人を育てたいという考えです。
具体的な流れ
1学期:知識インプット。ミドルリーダー層から新着任の教員へ、全体像を共有
2・3学期:実践・企画。新着任教員は次年度の新着任研修を計画。ミドルリーダーは学校を良くする企画を立案し、次年度のチーム実施を見据える
学年末:全体発表
5. 組織化のポイント:管理職の本気と属人化・二重管理の解消
推進が一定まで進むと、ICT担当者の努力だけでは越えられない壁が出てきます。中村先生が「今回一番伝えたい」と話したのが、この壁を越えるための組織化です。
壁の正体として、中村先生は大きく2つを挙げます。業務がシステムをまたいで重複する「二重管理」と、仕事が特定の個人に閉じてしまう「属人化」です。どちらも現場の工夫だけでは改善することは難しく、管理職が本気で動かなければ、解消するのは難しいといいます。
中村先生のコメント
『「できるから、あの人やっておいて」をなくし、共有する文化をつくる。これも担当者一人ではなく、学校が組織として仕組み化できるかにかかっています』
6. まとめ
中村先生は、自分たちのやり方がすべて正解ではなく、今も挑戦の途中だと話します。出発点は他校の取り組みの真似であり「まずは真似から始めていい」と強調しました。最後に紹介されたのは、ICT・生成AIコンテスト2026で校長先生からいただいた講評です。
「挑戦しなければ、何も得られない。先駆者の実践を真似ることで、少しずつハードルを越えていってほしい」