高1 ガルシア・マルケス「光は水のよう」【実践事例】(開成高等学校)

高1 ガルシア・マルケス「光は水のよう」【実践事例】(開成高等学校)

開成高等学校
山川 元教諭
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ロイロノート・スクールで意見を共有し、クラス全体で考えを深めながら、難解な小説を全員で読解する授業を展開します。

一人で読み解くには難解な小説を、ロイロノート・スクールを活用してクラス全員の知を結集することで読み深めようとする、3~4時間相当の授業を行いました。
1時間目は、ガルシア・マルケス著『光は水のよう』を通読した後、生徒たちはそれぞれ設問を作成して提出し、オリジナル問題集を作成しました。
2時間目に、前回作成したオリジナル問題集を配布・配信し、各自がその中から設問を選んで解いていきました。
3時間目は、前回の授業時にまだ解かれていない問題を手分けして解きつつ、同時に「『光は水のよう』は(   )な物語である。」と書かれたカードを埋め、全体のテーマを設定して提出します。生徒間通信を有効にしておくことで、クラスメイトが提出した「全体のテーマ」に触発されて新たなカードを作成したり、設問を解きなおしたりしながら進めていきました。「クラスメートの読み方に刺激を受けて各自が新たな解釈を提出する」という過程を全員が共有することで、クラス全体が協力してなんとか読みを深めようとしました。
最後の4時間目には、3時間に渡って取り組んできた読解の振り返りを行って、まとめとしました。
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ロイロノート導入のメリット

ロイロノート・スクールを使うことで、クラス全員の考えが授業内で共有され、その授業内で次々と更新されることによって、クラス全体で刻一刻と考えを深めていくことができました。

生徒の提出物が「カード」の形になっており、教師が並び替える際にあまり手間がかからないので、授業準備が省力化され、スペースもコンパクトになるので、印刷しても見やすくまとまります。

授業中はロイロノート・スクールを利用して、生徒たちだけで考えを深めていくことができます。生徒が活動するための枠組みさえ教師があらかじめ作成しておけば、授業中は教師が介入する必要もほとんどなく、生徒による主体的な取り組みによって授業が進行します。


実践の目標

表層だけを眺めていても理解することが難しいもの(こと)に向き合い、自分なりに意味や価値を構築しようとする姿勢を育む。

一つの視点から深めるだけではなく多様な視点を身につけることの重要性を、生徒それぞれの状況に応じて体感する。


実践の場面

1.【1時間目】設問を作成する

ガルシア・マルケス著『光は水のよう』を通読した後、設問を作成した。提出された設問を本文の順序に沿って教師が並び替える都合上、該当箇所のページ・行を明記してもらった。授業後、生徒が提出した設問のカードを教師が並び替え、それらに番号を付しておく。深い読解につながりうるオリジナル問題集を完成させた。

2.【2時間目】オリジナル問題集を各自解く

前回クラス全員で作成したオリジナル問題集を配布・配信して、各自がその中から設問を選んで解く。どの設問に取り組んだかをはっきりさせるため、解答の際には教師が付しておいた設問番号を明記してもらった。
この時間までは生徒間の情報交換をシステムとしては組み込まず、基本的に個人作業とした。

3.【3時間目】「全体のテーマ」を各自が設定する

50分授業のすべてを2つの課題にあてた。
1つは、前回各自が解答したものを一覧にした「解答例集」を見ながら、手つかずの設問を手分けして解くというもの。もう1つは、「『光は水のよう』は(   )物語である」と書かれたカードの(   )を各自が埋めて提出するというもの。なお、この時間からタブレット上での生徒間通信ができるようにし、生徒たちに互いの考えを共有してもらった。


設問の解答を通して読みを深める

黒板にはまだ解答されていない設問の番号を書いておき、解答が提出された時点でその設問の番号を斜線で消す。同時に、スクリーンには「全体のテーマ」の提出状況を映し、生徒たちが次々と「全体のテーマ」を提出する様子が見られるようにした。
生徒間通信が有効活用され、クラスメートの解答に触発されて新たな「全体のテーマ」を作成したり、友人の「全体のテーマ」をヒントに設問を解きなおしたりする姿が見られた。


全員の知を結集して読み解く

生徒間通信によって生徒たちは互いのカード(設問の解答・全体のテーマ)を共有していた。そして、誰かが提出したカードを参考に別の生徒が新たなカードを作るという連鎖によって共有している情報もたえず更新され、それぞれのカードが「優れた一人の読解」ではなく、「みんなで作り上げた読解」となっていた。一人で読み解くには難解な小説を、全員の知を結集することでなんとか読み深めようとするクラスの姿があった。

4.【4時間目】まとめと振り返りを行う

生徒たちだけでは気づくことのできなかったポイントがあったので、まずはそこに気づいてもらう作業をした。
その後、「設問作成の際、このような設問が作れていればよかったのでは?」、「誰かが書いた『全体のテーマ』の中に、このような観点があったのだからそれを参考に設問を解けば、より深まったはずだ」など、3時間に渡って取り組んできた読解の振り返りを行った。

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