【イベントレポート】宝仙学園小学校2月の公開授業研究会2026.02

2026.02.20に実施された「宝仙学園小学校2月の公開授業研究会「全校で挑む『探究』― 実践から学ぶ授業づくり」」のレポートです。宝仙学園小学校の先生方による公開授業と、外部講師による基調講演、パネルディスカッションなどを行いました。

公開授業①
1年 創造探究(生活科)「作ってみよう先生カード」
自分の話したいことはたくさんあるけれど、相手の話を聞くのは苦手な子どもたち。興味を持って相手の話を聞きたくなる取り組みとして、身近な存在である先生にインタビューをし、カードを作るという活動をしました。本時では、カードの内容をグループで考えることによって、友だちとも情報を共有し、考えを深め合いました。
2年 創造探究(生活科)「どんな動物園が「最高」?〜考えをつなげる動物園コンペティション〜」
「最高の動物園」をテーマに、チームで考えを出し合うコンペティション形式の授業です。動物の種類だけでなく、来る人や働く人への配慮も考えながら提案しました。質問を受けて考え直す場面を大切にし、話し合いを通して考えを少しずつ育てていく子どもたちの姿がみられました。
3・4年 創造探究(総合)「探Qベリーマッチ!(個人探究)」
本単元は、児童一人ひとりの「?」「やってみたい」を起点に学ぶ個人探究です。6つのカテゴリーとキーコンセプトを手がかりに、3・4年生が協働しながら探究を深めます。スクールAIを探究のサポート役として活用し、問いを立て、試し、考え直しながら、自分なりの納得解をつくる学びを目指していきました。
5年 創造探究(総合)「よりよい学校生活の探究」
もうすぐ学校の最上級生になる5年生が、よりよい学校生活とはなにかを考え探究します。具体的に考えた案を学校やクラスで実行し、どのような効果があったのかまで分析しました。5年生は一体何を考え、どのような行動を起こすのか?そして結果をどのようにまとめて、どう思うのか?ドキドキ、ワクワクする姿がみられました。
6年 創造探究(総合)「深掘りディスカッション」
6年間の学びの集大成である「卒業研究」を進めています。個人探究をサポートするシステムは様々ありますが、この研究授業では「探究のスパイラル」をさらに深めていく施策として、全員で一つのテーマを元に、様々な研究の切り口・方法を出し合い議論し、個々の研究のスキルアップに繋がる授業にチャレンジしていきました。

全体会・振り返り
宝仙学園小学校の概要について
本校は公立小学校より約1学期分の先取り学習を行っており、ほぼ全児童が外部の中学受験に挑戦する進学校です。 児童は高い知識や技能を持つ一方で、受験等による学習量の多さから、知的好奇心や自ら学びに向かう力に課題を抱えていました。 そのため、全学年で週1回の「創造探究」の授業を実施し、自ら学ぶ楽しさや主体性を育む教育へとシフトしている真っ只中です。

各学年の振り返り
1年生
探究の「種まき」として、先生にインタビューを行い、知られざる秘密をまとめたカードを作成しました。 学習において「知ることのワクワク感」を大切にしましたが、児童の想定外の行動も多く試行錯誤の連続でした。 今後は写真の撮り方なども学び、さらに本格的なカード作りへと活動を発展させていく計画でした。
2年生
「話す力」を軸に据え、1枚の絵の鑑賞から始まり、ディベートやコンペティションへと段階的に取り組みました。 他者から質問されることでハッとし、深く考えて自分の意見が更新されていくプロセスを重視しました。 探究に不可欠な「質問する・される」ことの面白さや価値を、児童が体験を通して学べる授業でした。
3・4年生
家庭ではなかなか時間が取れない「自分の好きなことや疑問」を追求する、個人探究を実施しました。 一人ひとりが独自の問いを持ち、自ら調べたり試したりする中で、大切なことを見出していく学習でした。 児童は6つのグループに分かれて自身のテーマに取り組み、主体的に学ぶ姿勢を育んでいました。
5年生
「より良い学校生活」をテーマに、座席の工夫や個室・自動掃除機の設置など、自分たちのアイデアを実際に試しました。 実践して終わりにならないよう、アンケート機能等を用いて論理的・定量的な結果分析に注力しました。 他者からのフィードバックを受けて改善を繰り返すことで、本格的な探究のサイクルを回していました。
6年生
学びの集大成である「卒業研究(個人探究)」の質をさらに高めるため、新たな授業スタイルに取り組みました。 一つのテーマをクラス全員でカテゴリー分けし、多角的に深めていく「深掘りディスカッション」に挑戦しました。 個人の経験則に任せるのではなく、探究を深めるための思考スキルをクラス全体で共有・向上させていました。

講演①
木村明憲先生(桃山学院大学)
木村先生は、全学年の児童が主体的に探究学習を回し、情報活用能力をしっかりと身につけている姿を高く評価していました。 「収集・整理・まとめ・表現」といった学習過程や方略を子どもたちに意識させることが重要であると説いていました。 1年生のカード分類や2年生の評価表の活用など、発達段階に応じた探究が実践されていると述べていました。 教員は過度に干渉せず、子どもに学習を委ねながら適切なタイミングで寄り添い、支援することが求められると指摘していました。 評価表やシンキングツールなどの「型」を可視化し、反復して経験を積ませることで情報活用能力が鍛えられると説明していました。 このような学習の積み重ねが、最終的に児童が自らの学習をコントロール(自己調整)し、自立して探究を進める力へと繋がっていくと語っていました。

講演②
三宅貴久子先生(瀬戸SOLAN学園)
三宅先生は、探究学習は教師から与えられるものではなく、児童の内発的な動機や知的好奇心からスタートすべきだと述べていました。 実際の個人探究の時間は完全に子どもに委ねられ、教員だけではサポートしきれないため保護者や地域の人を積極的に活用していました。 自立した学習者を育てるためには、単一の授業だけでなく、学校全体のカリキュラムや学習環境(空間や人)をデザインすることが重要だとしていました。 探究における評価の難しさを解消するため、24項目の評価指標を作成し、生徒の自己評価と教員との対話を通して成長を可視化する工夫をしていました。 5年間の継続的な実践により、子どもたちのテーマは身近な興味から始まり、自然と地域活性化などの社会貢献へと発展していくことが確認されました。 教員は「こうならねばならない」という枠組みを捨て、一人ひとりの思いに寄り添いながら多様な領域を経験させることが大切だと締めくくっていました。

パネルディスカッション
2年生、3年生担当+外部講師2名
宝仙学園の先生方からは、児童が自ら動く姿に探究の意義を感じる一方で、テーマ設定の難しさや時間・リソース不足が課題として挙げられました。 リソースが限られる環境でも、教室のスペース分けや少しの資料を置くといった環境の工夫で、児童の主体性を引き出せると提案されました。 自立した探究を行うには、教科学習の段階から計画表や振り返りといった「型」を用い、自己調整力や情報活用能力を鍛えておくことが重要だと指摘されました。 一方で型にはめすぎる危険性も議論され、「守破離」のように最初は真似から入り、試行錯誤を経て徐々に自走へと導く段階的な支援が求められました。 児童がどのような力を発揮しているかを教員が価値づけ、言葉にして共有することで、メタ認知が促され成長マインドセットが高まると説明されました。 最終的に、教員間で評価の「共通言語」を持ち、目指す子ども像の軸をぶらさずに学校全体でカリキュラムをデザインしていく必要性が確認されました。

まとめ
知識を詰め込む『与えられる学び』から脱却し、自ら問いを立てて学びをコントロールできる『自立した学習者』を育てるための、学校全体での探究学習への挑戦と試行錯誤の軌跡となる会でした。