【働き方ウィーク④】「時間がない」を言い訳にしない。若手教員が実践するICT・生成AIの働き方改革
2026年6月11日から全5回で開催しているオンラインイベント「ロイロノート働き方ウィーク」。
第4回のテーマは「若手教員のためのICTを活用した働き方改革」。日本体育大学柏高等学校の細川和哉先生・新堀朔也先生、安田学園中学校・高等学校の中村亮介先生の3名に、生成AIやICTを使った授業準備・学級経営・情報共有の工夫をご紹介いただきました。
登壇者
(写真左から順に)
細川和哉 先生(日本体育大学柏高等学校/数学科)
新堀朔也 先生(日本体育大学柏高等学校/国語科)
中村亮介 先生(安田学園中学校・高等学校/数学科)
目次
1. アーカイブ動画
公式YouTubeチャンネルにてアーカイブ動画を公開しています。ぜひご覧ください。
2. 細川先生:「時間がない」を言い訳にしない、1人働き方改革
教員3年目の細川先生は、授業・部活・学級経営のどれも妥協したくないからこそ、頼れるところはICTや生成AIに頼るという考えです。出発点にあるのは「時間をかけても完成度は変わらない」という実感。だからこそ作業はICTの活用で圧縮し、生まれた時間を生徒と向き合う時間に充てています。
主な実践
朝のショートホームルーム(7分):「一方的な連絡をすること」をやめ、必要な情報はGoogleサイト(コーディング不要でWebページを作れるGoogle社のツール)やドキュメントに集約。7分は「担任の想いを伝える・落ち着く時間」に充てる
授業中の「ミニ細川」:教師1人で生徒40人の「分からない」に同時対応するのは難しいため、教科書の内容を読み込ませた生徒向けのAIアプリを活用。答えではなくヒントを返す設計で、「できない/できそう/できた」と段階を分けている
授業準備の振り返り作成:コアとなる教材探究は自分で行い、思考の壁打ちや学習のまとめ、振り返りシートの作成は「NotebookLM」を活用する
日報のアーカイブ:自分の言葉を残すため日報を続け、月ごとにまとめて配信。ふとしたときに、生徒が後から見返せるようにしている
細川先生のコメント
『時間がないからできないのではなく、新しい時間を作り出せばいい。授業も部活も学級も大事だからこそ、頼れるところは頼る。そうして生まれた時間を、生徒と向き合う時間にしたいと思っています。明日から始められる1人働き方改革を、共に考えていきましょう』
3. 新堀先生:生成AIと対話しながら、授業を設計する
教員2年目で国語科の新堀先生は、「がむしゃらに働く中で、少しずつ働き方を整えている」段階だと前置きしつつ、生成AIとの対話を軸にした実践を紹介しました。
主な実践
カリキュラム・単元計画の設計:教材研究がなかなか追いつかない状況だったため、ChatGPTと対話を繰り返し、カリキュラムを設計。ロイロノートで集めた生徒の振り返りをChatGPTに読み込ませ、つまずきを可視化して次の授業に反映する
復習サイト・アプリの自作:古典や漢文は生成AIとそのまま対話させると誤りが出やすいため、GoogleサイトやGeminiを活用し、単元ごとの復習サイト・アプリを作成。漢文における「レ点の練習」などを自動正誤判定できるようにしている
進路探究のガイドサイト:進路に関する授業では、生徒と1対1で面談をしている。その際、他の生徒が手持ち無沙汰にならないよう、小論文や志望理由書の書き方をまとめたガイドサイトを用意し、自分で進路の準備を進められるようにした
議事録の作成:会議の音声を録音し、NotebookLMで議事録やスライドに変換。会議では目の前の対話に集中でき、欠席した教員にも内容を容易に共有ができる
レポートの評価:ルーブリックをNotebookLMに読み込ませ、それをもとにレポートを評価。教員間でばらつきの出やすい評価に、客観的な視点を加えている
新堀先生のコメント
『生成AIに「楽さ」だけを求めると、出力されるものに想いが伴わないと感じます。何を得たいのかが自分の中になければ、中身の伴わない文章になってしまいます。今はむしろ、AIとの対話で溢れてくるアイデアや想いの取捨選択に追われており、まだまだ私自身も使い方を模索している最中です。ただ、目の前にいる生徒のために、ICTや生成AI活用について学び続け、働き方をアップデートしていけたらと思っています』
4. 中村先生:ICTで「助け合える環境」をつくる
教員9年目の中村先生は、「周囲と関わりながら働きやすさをつくるための実践」を共有しました。ICTは冷たいと言われがちですが、使い方しだいで、ゆとりや助け合いを生むことができるという考えです。
主な実践
(1)情報共有の効率化
学年・教科で共有ノートを作り、資料や作った教材を残す。「あの先生しか資料を持っていない・データがない」という属人化を防ぐ
探究や行事の資料は、メインの担当が叩き台を作成し、他の先生も見ながら一緒に作る。「1人がやらされている」状態をなくし、学年の意識を揃える
試験範囲なども、担当が集約入力するのではなく、各自が共有ノートに直接書き込み、そのまま生徒に提示することで、連絡のラグや抱え込みが減る
(2)情報のオープン化(※試行中)
同じ年度に入職した教員で共有ノートを作り、聞かないと分からない暗黙のルールを可視化・マニュアル化することで、「聞けない不安」をゼロにする
学年・行事ごとにカテゴリー分けし、年度ごとに知見を蓄積。研修の時間を取りにくい新任の先生にとって、引き継ぎの資産になる
(3)相談の仕組み化
一部の先生と、共有ノートで日記のようにやり取りを行う。「話しかけるほどではないけれど」という相談を、気軽に書き込めるようにしている
すべてを対面で話す時間は取れないからこそ、ちょっとしたことは共有ノート、じっくり話すことは対面で、と使い分ける。こうした施策により、若手が一人で抱え込んでいる状態を早期にキャッチし、孤立を防止する
中村先生のコメント
『3つのアプローチは、単なる業務改善ではありません。効率化によって生まれた「時間と余白」が互いを思いやる、働きやすい職員室を創ることにつながります』
5. 【座談会】生成AI・ICT活用にたどり着くまでのプロセス
最後に、参加者から「生成AI・ICTを活用するまでにどんなプロセスがあったのか」という質問がありました。回答に共通していたのは、まず真似をして、生徒の反応を見ながら自分の形に絞り込んでいくという流れです。
細川先生:私の場合、大学までは野球一筋だったので、入職してからICTや生成AIに関する知識を学び始めました。1年目に同じ数学科の先輩から実践を教わり、合うかどうかは別として、とりあえず全部真似をしてみたんです。日報も当時の学年主任のやり方を真似て、生徒の反応が良かったので続けていますね。
中村先生:研修やオンラインでいろいろな実践を真似してみつつ、自分の学校に合うかを考えます。使えそうだと思ったらまずはやってみて、自分と生徒の反応を見て取捨選択します。飽きやすい性格もあり、合わなければ次を試すことが多いです。ただし「メインを決めて逆算する」という授業づくりの軸は変えません。
新堀先生:大学のゼミで、ロイロノートやGoogle、Canvaなど幅広いツールに触れたことが最初のきっかけでした。私は計画から立てたいタイプで、生成AIと対話してカリキュラムを作り、コンテンツに合うツールを選んで授業に落とし込みます。やってみた手応えを、またAIと対話して改善しています。
3人に共通するのは、誰かの真似から始め、自分の生徒に合うかを確かめながら形にしていく姿勢でした。完成された正解を探すのではなく、まず一つ試してみる。それが、明日からの働き方を変える一歩となりそうです。