高1 国語 『伊勢物語』3章段同時読み 『伊勢物語』(芥川)(東下り)(筒井筒)【実践事例】 名古屋市立山田高等学校 小川亞希子・加藤帆乃香

高1 国語 『伊勢物語』3章段同時読み 『伊勢物語』(芥川)(東下り)(筒井筒)【実践事例】 名古屋市立山田高等学校 小川亞希子・加藤帆乃香


基本情報
授業担当者小川亞希子、加藤帆乃香
ICT環境1人1台タブレット
学年 / 教科高校1年 / 国語総合ロ
単元『伊勢物語』(芥川)(東下り)(筒井筒)
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〈実践の概要〉
コロナ禍の分散登校期間において、『伊勢物語』の単元を一人ひとりが場所を問わず取り組むことができるよう、全時間ロイロノートで行った。
『伊勢物語』は、どの章段も教材的価値が高いが、授業時間の都合により教科書採録の中から教員が一部を選択して扱いがちである。本実践は、「芥川」「東下り」「筒井筒」といった本校採用教科書にある全ての章段について生徒が自ら調べ、ともに学び合うよう授業を設定した。
また、新教育課程にむけて、観点別評価や複数の担当教員による均質な授業の試行も兼ねている。生徒にとっては、おもにweb検索で得た知識であること、教員による板書がほとんどない授業であることから、学力が身に着くか心配していたが、定期考査での正答率は従来とあまり変わらなかったように授業者は感じている。

〈ロイロノート・スクール導入の効果・メリット〉
リモート授業が可能…「画面配信」機能やカードを「送る」機能で、指示を伝えられる。
リモート授業が可能…提出されたカードを添削し「返却」することで、双方向のやりとりができる。
リモート授業が可能…写真撮影したものを「提出」することで、自宅学習(補助教材への取り組み)状況が把握できる。

〈実践の目標〉
リモート授業を実現することで、コロナ禍においても、一人ひとりの学びの場を保証する。
『伊勢物語』教科書採録のすべての章段を扱うことで、歌物語に対する理解を深める。
新教育課程にむけての試行として、2人の担当教員で全7クラス同一授業を行う。

〈授業写真〉
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〈場面1〉導入
1 単元における学習の流れの確認
2 『伊勢物語』の文学史的位置づけ、特徴

連結されたカードがPowerPointの代わりとなり、単元の目標や授業の流れなど、必要な情報を漏らさず均一に伝えることができた。
『伊勢物語』の特徴については、3つすべての章段の共通点を探し、カードを作成して提出させた。おおむね「登場人物:男」「内容:恋愛」「構成:和歌がある」という解答がそろい、『伊勢物語』の文学史的位置づけや特徴について、教員が軽く説明を加えて授業が完了した。従来板書していた内容はカードとして一斉送信するため、座席や視力の関係で字が見にくいということはなくなった。

〈場面2〉研究①
3 グループ研究の進め方の説明
4 自宅学習課題の確認
5 グループ研究(1)

4人組のグループ分けとともに、班ごとに3つのうちどの章段を担当するかを決めた。さらに、班のなかではABCDの役割に分かれる。教員の準備としては、16種類の個別指示を作成したことになる。(16種類の内容は、後述)
個別指示は、「資料箱」を整備して各自で該当するフォルダへ進んで見るようにさせた。ここには教科書や便覧のPDFも入れて、自宅待機者も困らないようにした。また、古典作品への理解を深めるため、俵万智の「短歌を訳す」や「恋する伊勢物語」の文章もPDFにして入れた。
分散登校期間中で生徒には自宅学習の時間が確保されていたため、古典文法については配布プリントや補助教材といった自宅学習課題として、写真撮影をして期日までに「提出箱」に入れるよう指示をした。この時間内に発表用資料が完成しなかった生徒についても、残りは自宅学習の時間を利用して創意工夫のあるカードを作成することにさせた。


〈場面3〉研究②
6 グループ研究(2)

前時のグループ研究が個人プレイを中心としたものでややボリュームがあったため、発表資料の提出期限が守れていない生徒もいることを想定し、本時は、複数で一つの解答を用意しながら、作業の遅れている生徒をグループメンバーでカバーするような場を設定した。
『伊勢物語』の各章段に「○○な愛、○○の愛」などとタイトルをつけることをグループの共通課題とし、残り時間は、発表の練習や質疑応答を通して発表資料の再確認をさせた。

〈場面4〉発表①
7「芥川」
A 場面説明
B 和歌、反実仮想の助動詞に関連して、実際はどうだったか説明する
C 文法 副詞の呼応、係り結びの法則に関連して、女性の身分について分析する
D 古語、「鬼」の正体について紹介する

生徒による発表の後、教員が補足説明をする。反実仮想の助動詞や副詞の呼応については板書をするが、それ以外の内容については、生徒が各自で必要だと思ったことをノートに控えるよう、自由時間を設定した。

〈場面5〉発表②
8「東下り」
A 場面説明
B 和歌、修辞技法
C 文法、助動詞、「八橋」の様子をイラストで説明する
D 古語、「かきつばた」「あやめ」「菖蒲」のちがいを紹介する

生徒による発表の後、教員が補足説明をする。従来「からころも…」の和歌といえば多くの修辞技法が使われていて、板書しようとするとチョークの色数に迷ったり、生徒が同時進行でノートに写そうとするとレイアウトを失敗してしまったりするところであるが、あらかじめロイロの描画機能でカラフルに作成した資料を提示することで、生徒は各自考えながらノートに写すことができているようだった。

〈場面6〉発表③
9「筒井筒」
A 場面説明
B 和歌、修辞技法、後世への影響(樋口一葉「たけくらべ」)を紹介する
C 文法、係り結びの法則に関連して、経済状況について確認する
D 古語、女性の人物像について考察する

生徒による発表の後、教員が補足説明をする。最後に、冷めきっていた夫婦関係が修復されるほどの和歌という話題から、「当時の人々にとって、どのような和歌がスバラシイと考えられていたか」という問いを提示し、解答・確認させた。最後に、ふりかえりカードの記入・提出をさせて本単元を終了した。
『伊勢物語』についての単元理解として、
歌物語…和歌が教養の一つであったこと、和歌は「密度の濃い言葉の集約」であること
内容…おもに在原業平を主人公とする恋愛ものであること
後世への影響…『源氏物語』や、樋口一葉の『たけくらべ』、俵万智の文章などに関連していること
に主眼をおいた授業を目指した。

〈授業写真〉
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