中3 社会科 経済と豊かさ ロイロノートを活用し、深い学びを目指した公民的分野の実践【実践事例】 (深圳日本人学校)

中3 社会科 経済と豊かさ ロイロノートを活用し、深い学びを目指した公民的分野の実践【実践事例】 (深圳日本人学校)


基本情報
授業担当者樋口 康彦
ICT環境1人1台タブレット 電子黒板 ロイロノート
学年 / 教科中学3年生/社会科
単元経済と豊かさ
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〈実践の概要〉
本校が定義付ける個別最適化の階層レベル3を目指し、授業実践に取り組んだ。公民的分野で、生徒らに、多面的・多角的に物事を見つめ、深く考えることの楽しさに気付かせたいと考えた。ロイロノートを活用したことが、考えや意見を表現しやすく、また意見交換や議論につなげ、共有につながったと考える。

〈電子黒板やロイロノート・スクール導入の効果・メリット〉
①ロイロノートを用いることで、考えの根拠となる資料の活用や提示がしやすくなる。
②情報を収集、分析し、自分の考えをより深めることができる。
③意見の共有がしやすく、質疑応答につなげ、考えをより深めることができる。

〈実践の目標〉
①課題の解決に向けて習得した知識を活用して、事実を基に多面的・多角的に考察、構想することができる。
②説明したり、論拠を基に自分の意見を説明、論述したりすることにより、思考力、判断力、表現力等を養う。
③資料を読み取り解釈し、議論などを行って考えを深めることができる。

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〈場面1〉第1次【環境保全と経済発展の両立は可能か】
経済的分野の学習を進めてきた。好景気や不景気など日本国内だけでなく、世界各国との貿易や関係性を通して、連動していることをつかんできた。その中で、金融政策や財政政策など国内の景気を安定させる仕組み、また円高や円安、多国籍企業、輸出入についても身近な事例をもとに多国間との関わりについて理解を深めた。経済成長は大切な視点であるが、一国だけでは物語ることはできない。視野を世界規模に向ける必要があることに気付かせた。地理的分野では、アフリカ州、また南アメリカ州などで経済成長を追い求める中で森林伐採など環境に対する負荷がかかっていることを学んできた。開発を進めていかなければ自国として成り立たない国や地域がある中で、「環境保全と経済発展の両立は可能なのか」という問いに対して、考えをもたせる活動に取り組んだ。
「可能である」という意見では、現在生活している深圳を事例に出し、英語のレポートを読み取り、経済成長と環境保全の両立が可能であることを示した。「不可能である」と述べた生徒は、そもそも「環境保全とは経済活動の影響で起きる環境負荷を低減させる取り組み」であると述べ、環境への負荷は少なからずかかってしまうもので、地球規模で解決が必要な温暖化の問題を例に挙げ、経済発展に警鐘を鳴らしていた。答えのない問いではあるが、各々が答えをもち、社会の出来事に対して関わっていくことが大切であると生徒の様子から強く感じた。

〈場面2〉第2次【豊かさって何だろう】
前時のまでの学習を生かし、世界共通の定義が必要になることや、捉え方は先進国と発展途上国で異なる、また文化や価値観が異なれば、追い求めるものも違うだろうと話題が広がった。そこで、そもそもの「豊かさ」とは何かについて考える活動に取り組んだ。
「誰にとっても幸せな社会とは何か」「格差社会について考えたい」「男女平等問題について論じたい」「世界各国の格差を是正する取り組みを知りたい」と各々がテーマをもち、調べ、追究する活動に取り組んだ。
情報の収集、また資料作りの観点からもロイロノートの活用は効率的であった。意見の共有がスムーズにできた。その中で、「そもそも人間とはどう生きるべきなのか」という根幹に目を向ける意見や、「他者や他国に目を向けるのではなく、自分自身に目を向けて、見つめ直して生きていくことが重要なのでは」と意見が出た。生徒の思考の深まりを感じた。

〈授業写真〉
〈成果と課題〉
生徒の学びの深まりを感じる毎時間の授業であった。それを支えているのが、やはり学ぶ環境である。言いたいことを言える環境、そして聞いてもらえるという安心感。友人の話を聞いて自分自身の考えをより深めていこうとする関係はまず根底にあるだろう。そして、潤滑油になるのが、ICT機器である。考えを表現したり、比較検討したり、深めたりすることがこのツールの中でできる。やり取りの無駄がない。発表することだけが表現力ではない。頭の中に浮かんだこと、言葉にしたいがなかなかできない内容も文字にすればできる、図で表すことならできるかもしれない。考えたことや思うことを内から外へ表すことに抵抗感なく、それをさせてあげられる(後押しなのか、引っ張ってあげるのか、並走してあげるのか、見守るのか)教員は、その生徒一人ひとりの個性や状況を見取り、個に応じた最善を尽くしていく必要がある。個別最適化の研究を進めてきたが、この取り組みにもこれといった答えはない。生徒一人ひとり、そして学習や授業によって異なるからだ。学びの専門家としての教員は常にアンテナを高くし、手立てとなる引き出しを多くしておく必要があるだろう。既存に捉われない新しい発想を生み出せる創造性と受容感を大切にしながら職務に当たりたい。ICTは潤滑油である。チューンアップが常に必要だ。
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